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「風の影」by カルロス・ルイス・サフォン (翻訳: 木村裕美)

 
 
  読んでいて「フェルマーの最終定理」のフレーズが出てきて驚きました。直前に読んでいた「博士の愛した数式」(小川洋子)のなかで何度も出てきていた言葉だったからです。この「フェルマーの最終定理」の引用は主人公の友人のトマスと主人公の古本屋店員となったフェルミンが初対面で知恵を披露しあう小説の流れとはなんら関係の無い場面ですが,スペインを舞台にした小説だということを実感した一場面でした。
 この小説は,主人公が本の墓場と言われる秘密の建物に招き入れられて「風の影」という一冊の本に出会って始まります。その後著者の過去を探るなんとも複雑な探求の旅に入っていきます。
 バルセロナという数奇な歴史を刻んだ都市を舞台にその道筋は興味を掻き立てるものでした。首都のマドリッドとは異なりこの地中海の都市ではアール・ヌーボーや近代主義が花開きました。さらにアントニオ・ガウディなどの建築家も輩出。芸術色の濃い土地柄です。しかし1930年代に内戦が勃発し荒廃を味わいます。「このバルセロナって都市は魔性をもっていますよねぇ,ダニエル。人の肌にしみこんで気付かないうちに魂を奪っている」と小説内で書かれているとおり,このバルセロナという都市が無かったらこの小説は書けなかったと思わせるほどの存在感を示しています。「パリは空腹で死ねることがいまだに芸術だと思われている世界でただひとつの都市なんですよ」と書かれたパリも登場してきます。
 主人公は古本屋の息子としてこの出会った一冊の本との運命に翻弄されていくのですが,この本を読んで古本屋という商売のロマンというものを考えさせられました。
「お前が見ている本の一冊一冊,一巻一巻に魂が宿っているんだ。本を書いた人間の魂とその本を読んでその本と人生をともにしたり,それを夢見た人達の魂だ。一冊の本が人の手から人の手に渡るたびに,そして誰かがページに目を走らせるたびにその本の精神は育まれて強くなっていくんだよ」
 ゴシック小説の香りが漂うミステリー,歴史を背景にした恋愛ロマン.推理・冒険,庶民の風俗喜劇。読ませる要素満載でそして人生を考えさせる貴重な一冊になりました。
著者は何らかの形で続編を考えているとも伝えられています。これは大変楽しみなことです。

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» 『風の影 (上)(下)』 カルロス・ルイス・サフォン [*モナミ*]
バルセロナの街の描写が、素晴らしい。 特に、朝の風景が。 朝露に濡れた石畳とか、朝霧に煙る路地裏とか、 朝靄の中を走る路面電車だとか、 朝日に輝く石造りのピソ(アパート)だとか、 夜明け前の、暗さのほどけていく防波堤だとか。 ダニエルのように、夜明け前に起き出して、 クアトロガッツ(四匹の猫)というカフェに、 ペストリーでも買いに行きたい。 雨に濡れることすら、お洒落に... [続きを読む]

受信: 2007年10月14日 (日) 20時11分

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