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光抱く友よ -- 高樹のぶ子

 高樹のぶ子さんの芥川賞受賞作「光抱く友よ」、-- 大学教授を父親に持つ引っ込み思案の優等生・相馬涼子。アル中の母親をかかえ、早熟で、すでに女の倦怠感すら漂わせる不良少女・松尾勝美。17歳の2人の女子高生の出会いと別れを通して、初めて人生の「闇」に触れた少女の揺れ動く心を清冽に描く -- とクレジットにあるとおり、優等生と不良少女の出会いと別れを描いた小説ですが、彼女の小説は科学的というか不釣合いな学術的な香りがちりばめられています。なにしろ松尾は部屋に宇宙画を飾っていたり、涼子の父卓冶は大学教授は学校で顕微鏡を覗いていたり、天体望遠鏡を借りてきては二人に星を見せたりします。
 そしてそんな出来事を通じで、二人が仲良くなっていく過程もなんとなく感情を抑えた表現が漂う。ただその抑制の効いた表現のもと、登場人物の心の中の起伏は激しく揺れ、漂う。青春や友情を描いた小説というくくりで本当に良いのかという味わいがあり引き込まれました。この小説は、1984年に芥川賞を受賞している。今から24年前なんですね。不良といっても、親の病気を気遣う優しさも備えていて現代から見るとまだ極端な不良というわけではないですし、まだまだ親子の絆も強かったのでしょうか。なんとなく不思議な懐かしさを覚えた小説でした。

実は、以前彼女自身による自作再訪としてこの作品の生まれた姫路から播但線に入った地方の再訪記を掲載していました。(2004年4月)あわせてご参考にしてください。
 
この文庫本には、他に「揺れる髪」と「春まだ遠く」という短編も収められているのですが、これらの作品も興味深いものでした。たとえば、「春まだ遠く」では恋人同士が結婚まで、最後の一線の肉体関係を避けていくお話。いくら20年前とはいえ、処女のまま結婚を迎えるなんてほとんどありえなかったはず。周りの親しい友達もそんな二人のことを不思議な目で見る。ここにも高樹さんの思考実験のような観察眼が感じられます。
そこには「...最後の一線だと思っているものが、ちっとも最後の一線ではないっていうこと。一線なんて、もっと奥の、とことん奥にだって引けるってこと。どこにだって引けるし、みんなそうしているの」というテーゼに対しての思考挑戦のように思えます。

彼女の以降の活躍の伏線となる作品群であることは間違いないでしょう。

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