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「古事記の起源」 by 工藤隆


「古事記」という想像もつかない書物の解説本を読むのははじめてだった。なにしろ国文学というと、目をそらした態度をとっていた。
 ふとしたきっかけで、この書を手にとって読み始めこの実体不明な古文書がさらに自分゛にとって異様なものであることを知った。

たとえば、イザナミという女神の死と排泄物が新たな神を生み出すという話。嘔吐物・クソ・尿といったものから金属の神、水の神、食べ物の神といった存在が作られる。
また性行為に伴って島々やさまざまな自然物が生み出され、その最後の生成行為に火を生み出し死に至るといった話、不思議と生臭い神話の世界。

700年代、中国から新たな文化が流入してくることで「古代の近代化」が起こる機運の中で、神話時代への回帰エネルギーと天皇の神格化を狙ってこの古事記が編纂される起源になったと著者は総括する。

そしてこの本のもっとも独創的なところは、中国雲南省の少数民族に現代において、いまだに残る無文字時代の文化=「原型生存型文化」を調査し、口伝えに継承されている神話、具体的にはイ族創生神話「ネウォティ」を分析、その成果から古事記で描かれている無文字時代の神話に新たな解釈を与えている点である。

歌垣という行事も、日本・アジアに昔からあったようで、現在のアジアの歌垣を実際に分析している。

古代日本における歌垣は、特定の日時と場所に老若男女が集会し、共同飲食しながら歌を掛け合う行事であり、性の解放を伴っていたとされる。語源は「歌掛き (懸き)」であり、東国方言の「かがい(嬥歌)」も「懸け合い」に由来すると考えられている。時期としては春秋に行われ、生産の予祝・感謝としての性格を 持っていたとされる。場所は、山頂、海浜、川、そして市など、境界性を帯びた地が多く、常陸筑波山、同童子女松原、肥前杵島岳、摂津歌垣山、大和海石榴市、同軽市などの例がある。

海彦山彦神話も面白い。

弟のホオリノミコトは兄のホデリノミコトには互いに釣り竿と弓矢を取り替えてみようと提案しました。そして,兄は山へ,弟は海へ出かけました。しかし,二 人とも獲物をとることはできませんでした。そこで兄は弟に「やはり本来持つべき物を持って,本来の場所へ出かけないと何も得られないから,道具を返すこと にしよう。」と言いました。ところが,弟は魚がとれないばかりか,兄の大切な釣り針を海でなくしてしまっていたのです。それを聞いた兄は激怒してしまい, とにかく返せと責めてきました。そこで,自分の剣(十拳剣:とつかのつるぎと言われる剣)をこわして500本の釣り針を作り,それを持って行って償おうと しましたが,「なくした釣り針以外はいらない。」と言って許してはくれませんでした。

この神々のなんとも幼いともいえる話について、実はインドネシアに類似の神話があるそうだ。この原神話を伝えたのは隼人族で、紀元後3-5世紀に天皇士族と接触して伝えたのではないかとしている。 このように「古事記神話」が、ごった煮的神話で、いろいろな策略のもとに作られたものではないかと考えており、国や権力を争っていた背景が色濃く反映されている書物として生き生きと伝えられている。古代に思いを馳せらせるとても興味を引かれる一冊だった。

[Ref] 工藤隆HP

 

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