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エゴイスト by 桐生典子


桐生典子さんの「エゴイスト」、実は読み始めて気づいたのですが、著者をずっと桐野夏生さん桐生夏生さんと勘違いしていました。なぜか「桐」という漢字が印象的でややこしい?

ということで、勘違いから入った読書だったのですが、内容は女性の性を描いたもので結果的にとても興味深い一冊でした。

優等生の仮面の下で売春する薫子、視線に淫する芙紀、高校中退後、肉体 労働を続ける宏幸の性。そして二十二年前の倒錯した記憶に囚われている三人の父親―幸福を装う家族がそれぞれのエゴと本心を剥き出した時、欲求不満の哀し みを秘めていた母親も静かに狂いはじめる…。五感にしみる官能と陶酔に満ちた傑作サスペンス短編集!

このような紹介文が書かれていますが、セックスを通して女という生物を解体していく体験実験・思考実験という感覚に襲われました。自分の体を知っている女性自身が、自らの直接的な生理感覚で分解していく。それは、女性経験の豊富な渡辺淳一さんが、例えばシャトウルージュのような作品を通して女性を分析するものとは、また一味違ったものとなっています。  

印象に残っているシーンは、バッハの「ゴルトベルク変奏曲」を弾きながら結果的に不特定多数の男に体を預ける杏子というピアニスト。とても魅力的に描かれていながらミステリアスな雰囲気のうらに彼女の過去が重なり謎が深まっていきます。

もうひとつは、ジョージア・オキーフの「黒のアイリスIII」という絵画をひとつのモチーフにして女性の性を切り取っていく「抱かれて」という作品。
 ....「オキーフの絵が好きなのは、厳しいくらい簡潔でしかも官能に満ちているからよ。ね、アソコって考えようによっては、瑞江さんがいうように力強くて威厳があって、壮大なものかもよ。なにしろ命が出入りする場所だし、快楽の神経が集中しているところだから。ね、そうでしょ?」....
その後二人の女性の会話は、「エロスとポルノの区別もつかないんだから...」となっていくのだが、その区別がきちんとつくひとってどんな人なんでしょうと考え込んでしまいました。

「快感」を神からプレゼントされた人類、そのチャンスを徹底的に追及していく著者の作品には、今後も手を伸ばしてみたいと思っています。

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