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「まぶた」 by 小川洋子


 「眼球の表面を乾燥やほこりから保護するばかりでなく、視覚によって脳に送られる素材を一瞬のうちに取捨選択するシャッターと同等の機能を果たし、また必要なときには閉じたまま眠りを、場合によっては死をも準備してくれる薄い皮膜」(解説:堀江敏幸)、すなわち、まぶた。小川洋子さんの小説につきものの儚さ・一瞬の描写に「まぷた」の果たしている役割は決して小さくありません。
この短編小説集には、結論も無く教訓も無く、ただ不思議な読後感を読者に投げつけます。心臓にさざ波を立たせるような、忘れ去っていたり敢えて意識しないでおこうとした事を表面に掘り起こし目の前に突きつけられたような不安・苛立ちを残します。
 ただ決して重くのしかかるわけではなく、テレビの映像のように流れ去るような感覚。
「小さな死の塊」あるいは「かすかな命の影」と解説の堀江氏が表現している、生命体の限りある存在というものを意識させるのでしょうか?

そのような独特な世界を、たとえば、料理教室でのハウスクリーニング作業で配水管の中から過去何十年かの期間で堆積したゴミを流し台の上に逆流する描写(「お料理教室」)や卵巣から生えた髪の毛で織る織物(「詩人の卵巣」)を丁寧に描くことから、あぶり出していくのが彼女の技法ですね。
 
小川洋子の世界に浸った一冊でした。 

[Ref] 「博士の愛した数式」-- 小川洋子

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