
「やってみたい形だったのですが、自玉がずっと怖い形なので形勢は難しかったです。定跡化されているので、こういう形になるかと思っていたのですが。△7九銀の寄せが見えて、良くなったかなと思いました。次も、一生懸命やるだけです。」(渡辺明竜王)
「封じ手あたりで間違えたのかもしれません。▲2四歩と打っていった方が良かったかもしれませんが…よくわからないですね。興味がある形だったのですが、正しく指せませんでした。」(森内俊之九段)
終局後、二人が口にした観想の言葉でした。
「やってみたい形だった」「興味がある形だった」という言葉に、棋士の純真さを感じます。前記事でも書きましたが、この形は本当に将棋好きの好奇心をくすぐる手順だと思います。
対局二日目、83手目の封じ手がようやく前例の無い変化に導きます。指されてみれば森内らしい守りに重心を置いた手。その後も的確な手で後手王に迫る先手の差し回しで、後手の王は丸裸。控え室の評価も先手乗りだったのですが、それを粉砕する妙着が登場します。

ひとつめが88手目の△5五馬と引いた手です。この手は詰ましている飛車をどうぞお逃げくださいと言っている手で、しかもその前の手が飛車を詰める△3九歩成でしたからなおさらでした。
さらに驚愕だったのが、上図の△7九銀! 自宅解説の安用寺孝功六段が感想を記しています。
本局、一番のインパクトは96手目△7九銀(図)です。
寄せに入る場合、銀、桂、歩と持っているなら、普通銀はとどめに残し、桂と歩で何か手を作ってと組み立てるのがセオリーです。△7九銀は全くの逆ですし、しかも自玉が裸ならなおさらです。3三角が迫っているうえ、さらに銀を渡してしまいます。そんな状況でこの一気の寄せはすごいとしか言いようがありません。部分的に筋は見えたとしても、この局面では・・とつい打ち切ってしまいそうです。さすがの森内九段もこの銀打ちには一発KOだったのではないでしょうか。
玉の堅さに差があり先手有望かと思ってましたが…。竜王の正確な読みには脱帽です。
谷川・山崎・阿部・大野・戸辺といったそうそうたる控え陣の誰もが一秒も考えなかった妙手で、周囲の形勢評価を一気にひっくりかえしてしまいしまた。
渡辺竜王自身この手の発見に満足したのか、おいしそうにモンブランケーキを頬張るシーンが映っていました。
異次元、という表現がぴったりの差し回しで課題局面をクリアーした竜王。勢いに乗って一気に防衛を決めるのか、森内九段の起死回生はあるのか、第四局に注目が集まります。
[REF] 竜王戦第3局棋譜 @ 東本願寺「渉成園」

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