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Beyond Perfect、日本の美学を貫いた浅田真央の歴史的挑戦

浅田真央のオリンピックは銀メダルに終わったが、これは彼女が日本人の持つ美学を貫いた結果の壮大な偉業だった。後の歴史は、彼女の今回のパフォーマンスをより大きく再評価することに違いない。

今回、キムヨナが選んだ大技は3回転ルッツと3回転トウループのコンビネーション。一方浅田真央は3回転アクセルと2回転トウループ。ここに今回のオリンピックに対する二人の価値観の差がはっきりと浮き彫りにされる。

キムヨナの選んだ3回転ルッツ(3Lz)と3回転トウループの基礎点はそれぞれ6.0と4.0で計10.0、一方浅田真央の選んだ超難解な3回転アクセル(3A)の基礎点は8.2で2回転トウループは1.3しかなく計9.5、しかも3回転アクセルのGEO(Grade of Execution)は-4.2から+3.0と3回転ルッツの-3.0から+3.0と比較してマイナスのリスクが増大する。
キムヨナは勝負に徹して期待値が大きくリスクの低い選択をした。一方真央は、妥協せず自分の限界を超える戦いを挑んだ。
彼女は過去にこのように発言している。「去年よりも進歩していないと発展が無い」、彼女はその姿勢をバンクーバーという最終決戦でも貫いたのだ。

彼女の姿勢は見事と思う一方、この超難解に挑む選手に採点システムはとても冷たい。これは少し考えれば理由は簡単だ。この技は、日本と韓国という極東のごく一部の選手しか挑めないものだからだ。採点システムに影響力の強い西欧の選手達は、全く手に届かないBeyond PerfectのLevel、そのような状況で3回転アクセルに高得点を与えないのだ。

つまり浅田の挑戦は、採点システムに対する挑戦だった。そんな孤高な浅田を残念ながら政治的に弱腰の日本スケート連盟は十分なフォローはできなかった。低脳なマスコミも選手のシャツの乱れを指摘するだけで、強きに挑む報道は皆無だった。試合後、マスコミのインタビューを受ける浅田の涙の本当の意味をにわかスポーツ担当のタレント女子アナウンサーは読み取れるものではなく、見ていて悲しくなった。

浅田真央の偉大さを一番知るのはキムヨナに違いない。この四年の歳月をかけた大舞台で採点システムへの打算で大技を封印した彼女にとって、3回転アクセルを三回とも成功させてしまった真央は、そら恐ろしい存在だろう。

今後3回転アクセルの採点は、西欧の選手も飛べるようになった際に見直されるだろう。その日が来るのが何年後か分からないが、その年数自体が今回の浅田真央の歴史的挑戦を再評価するに違いない。


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