書籍・雑誌

源氏物語、読破チャレンジ、again

振り返ってみると、2007年瀬戸内寂聴さん現代訳の源氏物語読破に挑戦しながら、途中で頓挫したほろ苦い経験があるのですが、今回iPhoneの豊平文庫アプリをインストール、無料の青空文庫の何を読もうかなぁと逡巡していて思い至ったのは、なぜか源氏物語でした。それも与謝野晶子訳。どうかなぁと少しずつ試し読み、意外と読みやすい。あれよあれよと三巻の空蝉まで読み終えました。今は、夕顔の半分くらいまで進んでいます。
隙間時間で読めるのと、本自体を持ち運ばなくて良いエコシステムの恩恵で読み進めやすいですね。もちろん作品自体の面白さは必要です。
この与謝野さんの訳を読んで、また瀬戸内さんの訳ももう一度読んでみたくなりました。

とにかく、まずは読了再チャレンジ、このブログでも進展を随時報告していきたいと思っています。

瀬戸内寂聴の源氏物語

| | コメント (0) | トラックバック (0)

吉村昭『間宮林蔵』


シャナ(紗那村)、ナイボ(内保村)、フレベツ(振別村)と言った、北海道の地名を彷彿とさせる響き、サハリン=樺太という土地はしかし日本の支配下にあった戦前の人とその時代を体験していない戦後の人との意識では全く異なります。 江戸時代、当時原住民が実効支配していたその地を探検し、世界で初めてサハリンが島であることを発見した日本人が間宮林蔵でした。

郷里の近く、日本最北端の地・宗谷岬から稚内に向かう緩やかな湾の中に、間宮林蔵の石碑(間宮林蔵渡樺出港の地)があります。
子供のころは、その前の道路を通るたびに両親から氏が立派な人だったと教えられたものでした。昔の教科書には載っている偉人、現代の教科書にもまだ載っているのでしょうかね?
教科書には載っていないとしても当地稚内では当然ながら有名な人物です。

晴れた日には、樺太の島影がはっきりと見えるその石碑の地から間宮は樺太を目指したのでした。

その目的は幕府の命を受け、樺太が島なのか中国大陸と陸続きの半島なのかが、世界地理上の最後の謎とされていたからで、それを解明することは国防的に重要なことだったのでした。
この樺太の地理の謎については、当時の列強オランダやソ連の探検家たちも我先に解明しようと挑んだのですが、いずれも中国大陸との海峡が水深1メートルという浅瀬と鬱蒼とした深い森そして極寒の気候が探検家の接近を拒絶しつづけたのでした。

そんな時代、幕府の令にてアイヌを引き連れ命がけで樺太を探検した彼はついに樺太が島であることを発見したのでした。

この農民上がりで、しかしながら健脚で頑強な体と強い精神力を持った彼の一生を著者は緻密な調査で丁寧に追っていきます。

間宮も一度では成功せず二度にわたり探検をします。極寒の気候、現地人(韃靼人)との交流や支援の必要性から、生活に慣れたアイヌの協力が必要でした。彼らと生活を共にしていた間宮はアイヌ語も話せ、彼らの協力を得ることが成功のカギでした。

ただし、この世界初の発見は、鎖国下の日本から諜報家であったシーボルトの手を経てヨーロッパへと渡りそして世界に広められたというのは皮肉でした。
後年開国後にヨーロッパの文物がもたらされた明治期の日本に、地図にしるされた形で「間宮」の名前は戻ってきたのです。
綿密な取材と、素晴らしい構築力で歴史を眼前に甦らせてくれる一冊でした。

[参考]
間宮林蔵の世界へようこそ
本と映画、日記のblog ・・・おぼしきこと言はぬは腹ふくるるわざなれば(徒然草)-吉村昭 間宮林蔵

| | コメント (0) | トラックバック (0)

カンブリア宮殿「特別版」村上龍×孫正義

今年も一年、過ぎていきますね。

ことし最後の読書、孫正義さんと村上龍さんの今月発刊された「カンブリア宮殿「特別版」村上龍×孫正義」です。
テレビ番組「カンブリア宮殿」での対談の内容を本にしたものです。
今月八日の発売にもかかわらず楽天ブックでは早々の売り切れ、しかたないので近くの書店で探して購入しました。
ソフトバンクの組織、若きアメリカでの日々・起業、情報革命そして日本の若者へと多岐にわたる話題で読み応えがあり、4時間ほどで読み終えました。

印象深い内容の中でひときわ記憶に残ったのが、"新しい事業を始める際、どの程度の勝算があるものですか"、という村上龍氏の質問に対し、

「新規事業に参入するときには、七割以上勝つ確立がないと参入しません。自分の中できっちり計算できたなと思ったら参入します。 」となかなか手堅い答え。

ただ、次につづく言葉が含蓄がありました。

「勝算が九割だといいかというと、そうではない。九割になるまで待つと手遅れになる可能性が高いからです。七割の時点で参入しておかないと、世界中の人たちがどんどん来てしまうからです。」

遅いんですね、それでは。

「どちらかというと日本の大企業は九割まで待つ場合が多いのです。それでいつも後手後手に回っている。九のほうが七よりいいのではないということを理解すべきです。」

rtfとしては、現代における松下幸之助や本田宗一郎と並ぶ実業家として孫正義を挙げます。
彼らが今生きていたら、この爆発的に発展するIT/インターネットの世界に攻め入り果敢に挑戦しているはずです。世界の英知を集めリスクをとって攻める、それを孫正義が行っています。液晶・電子ブック・タブレット・Itune、他社が先行することを許さず七割で攻める松下や本田の戦い方を見たかったという残念な気持ちでいっぱいですが、嘆いていてもしかたない、孫正義に続く実業家がどんどん出てくることを期待して来年を迎えましょう。


| | コメント (0) | トラックバック (0)

勝手にふるえてろ by 綿矢りさ

綿矢りさ三年ぶりの小説「勝手にふるえてろ」、出版社が河出書房から文芸春秋に変わったんですね。
なりすまし同窓会の仕掛け、ずる妊娠の申請とおたく系の高齢非処女女子が忘れられない過去の男子と現実言い寄られる男子との間で、揺れ動く心理を描いた軽妙な一作。

とどきますか、とときません。光りかがやく手に入れないものばかり見つめているせいで、すでに手に入れたものたちは足元に転がるたくさんの屍になってライトさえ当たらず、私に踏まれてかかとの形にへこんでいるのです。

同時代の等身大の女の子の恋愛を描く綿矢りさの小説、どの作品も自分とカブる部分が多くて一気に読んじゃうという若い読者が多い。ちょっとしたことで傷つき、持ち直す、他人との距離感、関わり方、揺れ動く心理を話し言葉でつづっていく。

紆余曲折を経て好きというところに踏み込んでいく。

妥協とか同情とか、そんなあきらめの漂う感情とは違う。ふりむくのは、挑戦だ。自分の愛ではなく他人の愛を信じるのは、自分への裏切りではなく、挑戦だ。

愛することを挑戦と言い切る一作、愛することが若い女性にとっての大きな挑戦ともいえる現代性、新しい感覚を紐解いた一作だと思う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ゲゲゲの女房の水木しげる、トペトロとの50年

久々にNHK連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」にはまっています。漫画家・水木しげるの夫人・武良布枝が著した自伝をもとに、漫画家水木しげるの半生を生々しく描いていて見ごたえがあります。

ということもあり水木しげるにあらためて興味を持ち、氏の著「トペトロとの50年」を読みました。なんと戦争の時に助けてもらったラバウル島の土人というか原住民トライ族の少年トペトロと、戦後漫画家となって成功してから再度再会、そのご50年間に渡ってつきあい、彼の葬式(平成5年)まであげたのです。

その様子が、生々しい写真とスケッチ・漫画で描かれています。土人との生活は本当に楽しいと一時期彼は本気で移住することを考え、トペトロも彼の部屋を作って迎えようとしたのでした。
rtfも南方の例えばフィリピンで少し生活した経験から言えば、外国から見たら貧しいと思える彼らの生活も内側に入るととっても心豊かで本来の人間らしい生活と感じたものでした。

土人、森の人たちとの奇妙な交流の話を捨てておくのはもったいないと本にしたのだが、水木しげるの人生観を端的にあらわしていて興味深い一冊でした。ゲゲゲの女房を多角的に見る上でも面白い本でした。


| | コメント (2) | トラックバック (0)

「駒の音有情」 内藤國雄 

駒の音有情という内藤國雄九段の著書を読んだ。1992年初版の自分史、昭和29年に奨励会入りし将棋の世界で活躍した氏のたどって来た道は、まさに昭和将棋史とも言える興味深い内容だ。
神戸の薬剤師の家に生まれた内藤國雄は、兄たちが将棋を指しているのを見て覚えたという。終戦当時、父は将棋は良からぬものという先入観があったという。将棋盤を取り上げられないように留守を見計らって遊んでいた。
そろばんの暗算に熱中していたのがいつの間にか詰め将棋にとってかわった。
そして街の大道詰め将棋であらしまくった。「大道将棋あらしの子がいるから注意しろ」と業界に情報が流れたという。
そして伊藤看寿の「将棋図巧」「詰むや詰まざるや」の著書に出会う。そのスケールの大きさ、格調の高さ、芸術性に感動を抑えきれなくなった國雄はその世界にのめりこんでいった。
詰め将棋投稿などを続けていた國雄を後の師匠となる藤内金吾七段が訪ねる。阪田三吉の数少ないお弟子の一人の藤内は、衣類関係の商人だったが趣味が高じて中年でプロになったという異例の棋士だった。
そして当時の関西将棋会館へ、今は立派な建物であるが、当時は辺鄙なところにあって建物も古くみすぼらしかったという。そこで、当時のスター加藤一二三との出会い、奨励会での苦闘、三段地獄を味わう。
苦闘が続いていたその三段リーグ、角田三男七段の「それをなぁ、難しゅう考えすぎるんやからや。それで疲れて、一人でころんでしまうんや。ほかのもんは、そんなに読んでへんで。もうちょっと肩の力をぬいて気楽にやってみい」と言われる。
しかし将棋はあくまでも読みの戦いと力む内藤、しかし対戦の終盤でふと角田の言葉が浮かぶ、(そうや、後がないといっても命までとられるわけではない)、そう思って気楽にやると不思議なことにあっさりと勝ったという。
全力を出し切ろうと力むとかえって力が出なくなる、そう気づいた彼は四段入りを決めたのだ。

晴れてプロ四段となった内藤、稽古将棋も師匠から引継ぎ各界の著名人とも付き合いが増える。小説家の藤澤恒夫さんもその一人だった。のちに棋聖になった内藤に対して「小説内藤國雄」という作品もかいていただいたという。
またよく飲みに誘われた升田幸三さんから"研精不倦覃思惟深" と書かれた色紙をいただいた話、大山康晴名人との盤上・盤外の戦い、さらに自然流中原誠から恐怖心を感じた話(終盤の切迫した局面で穏やかな顔で盤面を見つめていて楽しんでいる)など逸話がなんとも興味深い内容となっている。
谷川浩司との出会いも早かった。この本には彼が内藤たちの若手勉強会で記録係をしている写真が掲載されている。まだ小学生か中学生のようで今の面影はほとんど見当たらないのがすごい。

将棋のかたわら、プロ歌手としても「おゆき」をヒットさせてしまう。「将棋にうつつをぬかさず、もっと歌ってください」と歌のファンから言われた逸話も。そして詰め将棋でも新幹線の中で編み出した実戦初形詰将棋やベンハーの製作。

「伸び伸びしみじみ」、内藤がモットーとする言葉だ。人間は高慢になると伸び伸びだけに偏してしまうし、失敗を恐れるとその逆に偏していじけてしまう。凧を舞う時の伸び伸びは遠心力でしみじみは求心力、そのバランスでうまく舞う。

将棋・酒・演歌、内藤の半生はあでやかな彩で将棋界に異彩を放っている。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

初買いは書籍、将棋世界・鉄道旅行地図帳満州樺太・読むだけですっきりわかる日本地理: 3冊

初買いは、イオンモール草津で。すごい人手で、どこもかしこも大行列。ということで、買うアイテムは本に限定。
2Fの喜久屋書店もかなりの客入りで、活気が溢れていました。きっと日本が不況だというのはジョークでしょう?!
 
一時間半ほど散策(立ち読み)して購入に至ったのは、将棋世界 2010年 02月号日本鉄道旅行地図帳(満洲樺太)読むだけですっきりわかる日本地理の3冊。

 将棋世界は、あらかじめ買うことを決めて行ったのですが、なんと見つからない。喜久屋書店の書籍数は膨大で雑誌もかなりの品揃えで、見つけられませんでした。
 結局お店のコンピューター端末のところで調べてもらいました。最後の一冊がありますといって連れて行かれたところは何度もチェックした雑誌コーナー。その平置きの奥のほうに最後の一冊が残っていました。手前の雑誌の山のせいで陰に隠れている形で見つけられませんでした。店員さんも、わかりにくくてすみませんと謝りの一言。「いえいえなかなかの売れゆきなんですね。」と嬉しかったのですが、もっと好位置に並べてほしいものです。
 この将棋世界2010年2月号、付録が"丸田祐三九段の短編詰将棋傑作集"。丸田祐三九段とは、とても懐かしい名前、はしがきに氏のコメントが載っているのですが、なんと91歳とのこと。引退から14年が過ぎているようです。しかしその高齢ながら作品これがまた美しい。簡潔な構図で解いていて気分がすっきりする作品揃いです。さすがの年季で思わず惹きこまれました。今でも新聞等に作品掲載が続いているようですが、いつまでもお元気で作品作りに励んでいただきたいものです。

 日本鉄道旅行地図帳(満洲樺太)は、正縮尺での戦前外地の鉄道地図です。立ち読みしていて思わず唸らされました。よくもこれだけ調べ上げたものだと思います。鉄道ファンではありませんが当時の満州鉄道や樺太鉄道の詳しい地図と解説、朝鮮満州優等列車系統図や満鉄あじあ号やラストエンペラー溥儀の皇帝専用列車の写真とか、この値段でこの内容は素晴らしい。5年前に長春を訪問さらに4年前に大連散策した際に肌で感じた満州国の面影も思いおこし、良い買物ができました。
また坂の上の雲の鑑賞ガイドにも役立つと思います。

 読むだけですっきりわかる日本地理は、以前買っていた読むだけですっきりわかる日本史と同じシリーズ。本当にすっきりとわかり易く雑学の整理にはもってこいでしたので、この日本地理も買いました。
パラッパラッと読んでいて千葉県がナシの生産が日本一だとわかりました。落花生だけじゃないんです、千葉は。大農業県なんですね。

買い終えてスタバに入ろうとしたのですが、まだ長い行列。あきらめて家路につきました。

その他に、新幹線で戻るのに嵩張るので購入に至らなかったのですが、人間力(船井総合研究所船井幸雄氏と羽生善治名人の対談集。企業経営と将棋という異色対談)、永世竜王への軌跡(渡辺明永世竜王の渾身の一冊、彼の棋譜解説が念入りで素晴らしい)、ジャズ批評 2010年 01月号(海外探訪記ーヨーロッパ・ジャズ・レポート-じっくり読んで見たい内容)は、立ち読みしていて是非買いたいと思いました。

戻ってから是非、購入したいと思っています。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

神々の乱心 : 松本清張


神々の乱心を読み終えました。といってもこの作品は松本清張さんの遺作で、未完の小説です。文庫本で上下二冊に及ぶ大作ですが、物語の最後の部分が書き終えられずに世を去ってしまいました。
しかしながらこの小説を連載していた週刊文春の編集者・藤井康栄さんに大よその結末を話していたようで、そのインタビューも併せて読むとほとんど完結した小説として味わうことができました。
 

昭和8年。東京近郊の梅広町にある「月辰会研究所」から出てきたところを尋問された若い女官が自殺した。特高課第一係長・吉屋謙介は、自責の念と不審から調査を開始する。同じころ、華族の次男坊・萩園泰之は女官の兄から、遺品の通行証を見せられ、月に北斗七星の紋章の謎に挑む。

藤井さんによると、この小説は松本清張さんが若いころから構想を練っていたようで、いつもながらの緻密な取材と時代考証を重ねていて、読者を昭和初期の独特な世界へひきこみます。
捜査とともに事件は大きく展開し、新興宗教・皇室・満州・阿片・陰陽道・卑弥呼といったキーワードが現れる時間・空間・階級に渡る壮大な広がりを見せます。

なおこの小説は、原武史さんによって松本清張の「遺言」という本で解説されているようで、それを読まれた六条亭の東屋さんによると、月読命(ツクヨミ)を祭神とした「月辰会」は、実はツクヨミが秩父宮に擬せられるとともに、昭和天皇の皇位を秩父宮がつぐことを画策して、皇室の女官に近づき、いずれ二・二六事件をモデルにしたクーデター事件がクライマックスになったという推論があるようで、これは清張による近現代史分析の遺言と考えられるとのことでした。

生前氏の講演会を近江八幡市で聞いたことがありましたが、冷静に時代を見据える洞察力は説得力があり惹きこまれました。その時間を思い出しつつ偉大な小説家、歴史家の清張さんの作品に触れる喜びを感じる作品でした。

松本清張の「遺言」も引き続き読まなければいけませんね。


| | コメント (0) | トラックバック (0)

小川洋子『妖精が舞い下りる夜』

小川洋子さんの小説を断片的に読んでいましたが、今回初めて彼女のエッセイを読んでみました。『妖精が舞い下りる夜』という素敵なタイトル。書きたいと強く願った少女が成長しやがて母になり、芥川賞を受賞した日々を卒直にひたむきに綴り、作家の原点を明らかにしていくという内容。
彼女の文章は繊細で人寄せ付けない強さや曖昧さを排除するような論理性も持ち込んでいます。その強さと静かなる情熱を垣間見るようでした。

レースの模様を決定づけているのは、材料の糸ではなく、糸の通っていない空洞の部分なのだ。つまりわたしは、見えないものを見ていたことになる。

 小説と関わっている時も、同じようなことが起こる。今わたしが心を突き動かされているのは、言葉そのものによってなのだろうか、その向こうに透けている、言葉にできない空間によってなのだろうかと、混乱に陥ることがある。

 小説を書いてゆくうえで、ある一つの言葉を選ぶということは、他の無数の言葉を捨てるということだ。ある一場面のその一瞬を表現するのに、どの言葉を用い、どの言葉を書き記さないでおくか、わたしはいつも選択を迫られている。ある時は無意識に、ある時は苦心して何かを選んでいる。選択の連続によって書く作業が進んでゆく。しょっちゅう、選び方を間違えてはいるのだが。

 選ばれた言葉たちは輪郭を作り出し、切り捨てられた言葉たちは空洞を生み出してゆく。この二つの作用は、レース模様の表と裏のように、優劣なくイコールで結ばれている気がする。空洞だからと言って、形あるものに劣るわけではない。

小川洋子『妖精が舞い下りる夜』角川書店,1993.7,P.15

一つの言葉を選び他の無数の言葉を捨てるという行為、書くという行為を遠い視点で見つめる彼女、その行為を続けるにあたっての拠り所も紹介しています。

愛の生活」という金井美恵子さんの作品は彼女の座右の銘とか。言葉が出てこない時にパラパラっとめくってヒントを得るそうです。
また書き続けていることでいろんな人との素敵な出会いも紹介しています。
シュガータイムという作品を書いた時、すばらしい挿絵をかいていただいた斉藤真一さんという画家さんやそもそもシュガータイムという作品名をつけたもととなった元祖シュガータイムの佐野元春さんとのご対面・お話。

深い思いで書き綴りつつも実はごく一般的な日常生活をしている、そんな断片を紹介する楽しいエッセイ集でした。

[REF] Panasonic Melodious Library by YokoOgawa


 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【 第108回文學界新人賞発表 】 白い紙 / シリン・ネザマフィ

200904160732301文学界で権威のある文學界新人賞に、イラン・テヘラン出身のシリン・ネザマフィさんの作品「白い紙」が選ばれました
今日のNHKニュースのインタビューで受賞の喜びの声を伝えていましたが、彼女は一般企業に勤めるエンジニアで会社の人に小説を書いていることを教えていなかったとのことです。
小説を書いているということが、なんとなく「ちょっと格好悪い、口が裂けても言えなかった」という気持ちだったようです。これで堂々と書いていけますね。この作品では、どれだけ周りの環境が自分の人生に影響を与えるかということを書きたかったとのことです。
日本については、京都の街にとても興味があるとか。京都という街は世界の都市のなかでも特異な面白い街「別世界」と感じているようで、この辺はrtfの感覚と似ていて親近感が沸きますね。
これからも自由に小説を書いていってほしいものです。

シリン・ネザマフィ(Shirin Nezammafi شیرین نظام ‌مافی)さんは、イラン・テヘラン出身。神戸大学工学部卒業・神戸大学大学院自然科学研究科修士課程を修了後、松下電器(当時:現パナソニック)に入社した。母語はペルシャ語。日本語を母語としない作家が文學界新人賞を受賞するのは、中国出身の楊逸さん(2007年受賞、2008年には芥川賞を受賞)についで2人目で、非漢字圏出身者としては初の受賞となる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧